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研究目的

ポストゲノム時代の「動的天然物化学」を目指して

―生物現象からゲノム情報までを一本のストーリーとして語る。キーワードは「生理活性物質」―

 動植物などの生物から複雑な構造を持つ天然有機化合物を取り出し、構造を解明し、 これを合成する天然物化学は、有機化学のルーツです。 生物が生産する化学物質を研究するという行為は、「自然のなぞに触れる」という人間の好奇心の源泉を刺激するものです。 一方、生物の行う様々な生理現象が、ホルモンやフェロモンのような低分子の有機化合物によって制御されていることが明らかになり、 このような化合物の研究によって「生物現象に化学でアプローチする」ことも夢物語では無くなりました。

 今から20年以上前に、私の恩師、故後藤俊夫教授は「動的天然物化学」という研究スタイルを生み出しました。 これは、生物現象を生理活性物質の化学構造式の変化、すなわち化学反応として解明することで、生物現象の化学的解明を目指すというアプローチでした。

 しかし、生物の全遺伝子情報であるゲノムが次々と解明されつつある現代において、「動的天然物化学」も、 生命科学の一分野としてさらにversion upする必要があります。 それは、生命現象を化学反応と、さらにはタンパク質などの生体高分子との相互作用、これに続く遺伝子情報の制御まで含めて理解する必要があるからです。 欧米で言う、ケミカルバイオロジー(化学生物学)、ケミカルジェネティクス(化学遺伝学)と言われるアプローチを取り入れるわけです。 また、動的天然物の伝統を持ち、歴史的に多くの生理活性天然物を発見してきた日本では、欧米とはまた違った形のケミカルバイオロジー、ケミカルジェネティクスが発展するであろうと予想されます。 ポストゲノム時代といわれる今日、生理活性物質を用いて、ゲノム科学とは逆方向から生命現象へアプローチする方法は、ゲノムが苦手としている問題を解決できる重要な手法となりつつあります。 トンネルを両側から掘るように、両者のアプローチをあわせれば、生物現象からゲノム情報までを一本のストーリーとして語ることができる日が遠からず来ることでしょう。 私達の研究室では、かつてよりも深く「自然のなぞに触れる」ために、ポストゲノム時代の「動的天然物化学」を目指して研究を進めています。

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